日常的に使う漢字の画数と、占いで提示される画数が食い違う根本的な原因は、多くの伝統的姓名判断が「康熙字典(こうきじてん)」の画数計算を絶対的な基準として採用している点にあります。康熙字典とは、清朝の康熙55年(1716年)に完成した中国の官撰字書であり、漢字の字形・部首体系を4万7,035字にわたって集大成したものです。
日本の姓名判断の礎を築いた昭和初期の大家・熊﨑健翁(くまざきけんおう)をはじめとする伝統流派は、「文字には魂や霊力が宿る(言霊・文字霊)」という思想に立脚しました。彼らにとって、戦後の当用漢字表(1946年)や常用漢字表によって筆記の簡略化を目的に作られた「新字体」は、単なる行政上の便宜的記号に過ぎません。
漢字が数千年の歴史の中で培ってきた象形や指事の意味、すなわち「宇宙の理(ことわり)」を宿すのは文字が本来持っていた原義の字形である、という解釈が根底に存在します。たとえば「海」という漢字を日常では9画として書きますが、伝統的な流派では「水」が本質であるため、部首を4画として扱い全体を10画とカウントします。このように姓名判断で旧字体を使う理由は、書きやすさではなく「漢字の成立背景にあるエネルギー(象意)を正確に読み解く」という呪術的・民俗学的な要請によるものです。
しかし、この原則を知らずにネットの無料診断を利用した親世代は、戸籍に記載する文字の画数と鑑定結果の落差に直面し、強い混乱に陥ることになります。