白石由竹というキャラクターを語る上で欠かせないのが、実在したモデル「昭和の脱獄王・白鳥由栄(しらとり よしえ)」の存在です。白鳥由栄は青森刑務所、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所の4箇所から脱獄を成功させ、日本の犯罪史にその名を刻んだ伝説の人物として知られています。
関節を自在に脱臼させる特異体質や、味噌汁の塩分で手錠を腐食させる知略、身体能力の高さなど、白石の基本ギミックの多くは白鳥の実話に基づいています。原作者の野田サトル氏は、この圧倒的な犯罪記録の持ち主をベースにしながらも、冷酷な凶悪犯ではなく「どこか憎めない愛されキャラ」として白石を再構築しました。
白鳥由栄の生涯は苛烈な刑務所内の規律との戦いでしたが、白石由竹は「脱獄そのものが目的化している男」として描かれます。この設定変更こそが、重厚かつ陰惨になりがちな金塊争奪戦において、読者に息継ぎの場を与える決定的な役割を果たしました。