『カーネーション』の物語において、中盤最大のクライマックスであり、朝ドラのタブーを破ったと評されるのが、長崎出身の職人・周防亮(綾野剛)との恋愛劇です。
戦死した夫・勝(駿河太郎)亡き後、女手一つで店を切り盛りし、三姉妹を育てていた糸子。そこに現れたのが、繊細な技術を持ちながらも生活に困窮していた周防でした。二人は洋服作りを通じて深く惹かれ合い、やがて仕事上のパートナーを超えた関係へと発展します。
妻子ある周防との関係は、現代でいう不倫であり、保守的な朝ドラの枠組みでは極めて異例の描写でした。しかし、脚本はこれを安っぽいスキャンダルとしては描きません。糸子の情熱、周防の哀愁、そして噂が広がる岸和田の町で小原家を守ろうとする周囲の人々の苦悩が、重層的に描かれました。
最終的に糸子は、周防のために出資して紳士服店を持たせつつも、自ら関係を清算する決断を下します。周防が去る際に見せた静かな別れのシーンは、綾野剛の出世作として今なお語り草となっており、視聴者に強い喪失感と納得感を与えました。