終身雇用という単一のレールが消滅し、ジョブ型雇用の浸透とリスキリングによる転職が標準化しつつある現代において、勤続年数は「会社に委ねる受動的な数字」から「自ら戦略的にコントロールすべき資産指標」へと変化しました。人事労務と税務の観点から導き出される、損をしないための判断基準を提示します。
退職日を「月末」にするか「翌月1日」にするかの決断基準
退職の交渉を行う際、最も慎重になるべきは退職日を「当月末日」にするか「翌月1日」にするかの選択です。ここには明確な向き・不向きが存在します。
- 翌月1日退職が絶対に向いている人:
在籍期間の末尾が「〇年0か月(ちょうど満年数)」で終わりそうな人です。退職日を翌月1日に設定するだけで、在籍期間に「1日」の端数が発生し、税法上の勤続年数が1年切り上がります。これにより退職所得控除枠が40万円(または70万円)増額され、手取り額を合法的に最大化できます。 - 当月末日退職を検討すべき人:
退職日を翌月1日に設定すると、健康保険法および厚生年金保険法の規定により「その前月分の社会保険料」が退職月の給与から控除されます。退職金の税額軽減効果よりも、翌月1日退職によって生じる自己負担分の社会保険料負担が上回るケース(退職金支給額自体が少額で控除枠の増額が無意味な場合など)では、あえて月末退職を選んだ方が手元資金を残せる場合があります。
自らの退職金見込み額、有休残日数、そして社会保険料の控除ルールを天秤にかけ、数日間の退職日調整を行うだけで、生涯手取りに明確な差が生まれます。会社の言いなりに退職日を決めるのではなく、就業規則と税制のルールを突き合わせた逆算のスケジューリングが求められます。