「もはや数年前のハバネロやジョロキアの辛さでは、舌の肥えた客は納得してくれません」
都内で激辛ラーメン店を切り盛りする店主は、カウンター越しにそう語る。厨房の奥に並ぶのは、防護メガネを着用して扱う改良型キャロライナ・リーパーや、近年交配された超高スコヴィル品種の乾燥スパイスだ。地球規模の気候変動によって海外主要産地の収穫量が乱高下するなか、より過酷な環境で生き残った唐辛子は皮肉にも辛味成分をかつてないほど濃縮させている。
香辛料を扱う輸入商社によれば、国内食品メーカーや外食チェーンからの「規格外の刺激」を求める発注は前年比で4割増。単なる話題作りを超え、熱狂的なリピーターを繋ぎ止めるためのキラーコンテンツとして、高純度カプサイシンの争奪戦が水面下で過熱している。