「金星を獲れば一生食いっぱぐれない」という言説は、昭和から平成にかけてテレビ中継の解説や居酒屋の相撲談義でまことしやかに語られてきました。しかし、結論から言えば金星の給金は一生続くかという問いの答えは明確に「否」です。引退後に日本相撲協会から現役時代と同様の金星手当が毎月、あるいは毎場所のように支給され続ける事実は一切ありません。
では、なぜこれほど強固な俗説が定着したのでしょうか。その背景には、大相撲独自の給与メカニズムである「力士褒賞金(力士の持ち給金)」の特殊な計算ルールがあります。金星を1個獲得すると、現役力士の基本給金が10円加算され、その実績は現役を退く日まで決して減額されることなく累積し続けます。この「現役である限り一生減額されない」という永続性が、いつしか尾ひれをつけられ、「現役を退いた後も死ぬまで年金のように支給される」という誤った情報へと変貌していったのです。
相撲部屋関係者は次のように証言します。「昔から後援会の方々からも『金星獲ったから一生安泰だな』とよく声をかけられますが、土俵を去ればそこで支給は終了します。一般企業の資格手当が退職後に出ないのと同じ理屈ですが、相撲界の独特な『給金』という言葉の響きが、公的年金のような誤解を生みやすい土壌を作っているのです」。