「会いたくて震える」というフレーズの震源地は、2010年5月19日にリリースされたシンガーソングライター・西野カナのシングル『会いたくて 会いたくて』です。ジュエリーブランドのCMソングとしても起用された同曲は、着うたフルをはじめとする配信チャートで前人未到の記録を打ち立て、累計ダウンロード数は500万DL以上を記録するメガヒットとなりました。
サビの歌い出しである「会いたくて 会いたくて 震える」というストレートすぎる感情吐露は、当時の女子中高生や20代女性の心を鷲掴みにしました。西野カナの作詞手法は、友人たちへの徹底した聞き取り調査やアンケートをもとに、リアルな感情の断片をノートに書き留めていく「リアルリサーチ型」として有名です。当時の音楽特番や雑誌インタビューにおいて、本人は次のようなニュアンスを語っています。
「大好きな人にフラれたり、すぐに会えないもどかしさを感じたとき、悔しさと悲しさで本当に手や膝がプルプルと震えた経験があった。その時のありのままの感覚を言葉にした」
マーケティング的な作為ではなく、実体験に基づく生々しい身体実感がそのままリリックに昇華されたからこそ、聴き手の情動を強く揺さぶる結果となりました。しかし、その余りにも直接的で強烈な表現は、リリース直後から音楽シーンの枠を越え、ネットカルチャーを巻き込んだ一大潮流へと発展していくことになります。