近年、日本の合計特殊出生率が低迷を続ける中で、ネット上では「一夫多妻制こそが最強の少子化対策になる」という言説が散見されます。この論理の根底にあるのは、「養育費を潤沢に出せる高所得男性が3人、4人と妻を持てば、経済的理由で結婚や出産を諦めていた女性が子どもを産めるようになり、国全体の出生率が跳ね上がる」という単純化された計算式です。
しかし、人口統計学や社会学の専門的見地からは、この仮説に対して極めて強い否定的なデータが突きつけられています。
第一に、出生性比は自然状態において男児が女児より約105対100とわずかに多く生まれるため、一部の富裕層男性が複数の女性と結婚すれば、必然的に中間層以下の男性が配偶者を獲得できない「未婚男性の大量余剰」が発生します。社会学の研究では、結婚適齢期の男性が配偶者を得られない比率が高まる社会では、暴力犯罪の増加、社会的孤立、反社会運動の先鋭化など、深刻な治安の悪化を招くことが指摘されています。
第二に、一夫多妻制が合法な諸国を見ても、都市化や教育水準の向上に伴い出生率は急落しています。例えばUAEでは、一夫多妻制が維持されているにもかかわらず、近年の出生率は1.4前後まで低下しており、「制度が一夫多妻だから子どもが増える」という相関関係は成立していません。
SNS上での世論調査やネットの反応を見ても、「制度の恩恵を受けるのはごく一握りの金持ちだけで、多くの男性は見捨てられる」「女性が経済力のための出産マシーンとして扱われる恐れがある」といった強い拒絶反応が主流を占めています。少子化の本質的な原因は若年層の不安定雇用、教育費の高騰、家事育児の偏重にあり、婚姻形態の改変で解決できる問題ではないことが浮き彫りとなっています。