崩壊した歯を長期間放置し続けると、被害は口の中だけに留まりません。「ひどい虫歯放置の末路」として待ち受けるのは、顎の骨の融解や生命危機に直結する全身感染症です。歯科臨床の取材現場では、放置された虫歯が原因で救急搬送され、集中治療室(ICU)での治療を余儀なくされた事例が毎年報告されています。
代表的な重篤合併症が「虫歯で骨が溶ける顎骨骨髄炎」です。歯根の先端から溢れ出た細菌が下顎や上顎の骨髄腔に広がり、骨組織を急速に腐敗させていきます。骨髄炎を発症すると高熱とともに顎全体が激しく腫れ上がり、最悪の場合は骨の一部を外科的に切除しなければなりません。さらに上顎の奥歯の虫歯を放置すると、すぐ上にある副鼻腔へと膿が突き抜け、「歯性上顎洞炎」を引き起こして視覚異常や激しい頭痛をもたらします。
見過ごせないのが、腐敗組織から放たれる「ひどい虫歯特有の口臭と腐敗臭」です。壊死した神経や歯肉の隙間に繁殖する嫌気性細菌は、メチルメルカプタンや硫化水素などの揮発性硫黄化合物を大量に産生します。これは通常の口臭とは比較にならない強烈な生ゴミ臭・腐敗臭となり、社会生活における対人関係を著しく損なう要因となります。
さらに恐ろしいのは、虫歯菌が毛細血管を通じて体内を駆け巡る「虫歯菌による全身疾患と敗血症リスク」です。血流に乗った細菌が心臓の内膜に巣食う「感染性心内膜炎」や、血管壁に炎症を起こして動脈硬化・脳梗塞を誘発するリスクが学術的にも立証されています。免疫力が低下した状態では、全身に細菌毒素が回る敗血症性ショックを引き起こし、多臓器不全により致死的な結末を辿る危険性すら孕んでいます。