紅茶を淹れる際、丸底のガラスポットの中で茶葉が浮き沈みを繰り返す現象を「ジャンピング」と呼びます。この躍動こそが、紅茶が美味しく仕上がっている視覚的サインです。
茶葉がジャンピングする理由は、水中に溶け込んでいる空気(酸素)にあります。酸素をたっぷり含んだお湯を勢いよく注ぐと、微細な気泡が茶葉の表面に付着して浮力が生まれます。やがて水面で気泡が弾けると茶葉は自重で沈み、下からの対流に乗って再び浮上します。この上下運動が天然の攪拌機となり、ポット内の温度を均一に保ちながら、茶葉を無理なく均等に開かせるのです。
ジャンピングを発生させる絶対条件が、軟水と汲みたて水道水の沸騰温度の管理です。汲み置きの水や電気ポットで何度も再沸騰させたお湯は、水中の溶存酸素がほとんど抜けています。また、硬度の高いミネラルウォーター(硬水)はカルシウムやマグネシウムがカテキンと結びつき、香りを封じ込め色を黒ずませてしまいます。日本の蛇口から出る「汲みたての軟水」を一気に強火で沸かし、500円玉大の泡がボコボコと激しく湧き上がる完全沸騰状態(100℃)で注ぐことこそが、世界最高峰の紅茶環境を作り出します。
抽出時間と蒸らし時間の目安は、上記の表の通り茶葉の細かさによって論理的に決定されます。蒸らし中はポットにティーコジー(保温カバー)や厚手のタオルを被せ、ポット内の温度を高温のまま維持することがプロの現場における共通の常識です。