鉄鍋炖を語る上で欠かせないハイライトが、煮込みの中盤に訪れるとうもろこしパンの貼り付けの儀式です。煮汁がグツグツと沸き立つ鉄鍋の内側、スープの水面より少し上の熱せられた鍋肌へ、店員が黄色い生地を手際よくペタペタと叩きつけるように貼り付けていきます。
このパンは現地で「玉米餅(ユイミービン)」や「鍋貼(グオティエ)」と呼ばれ、粗挽きのトウモロコシ粉に小麦粉や大豆粉、イーストを混ぜて練り上げたものです。鍋に重厚な木蓋をして密閉し約15分から20分間強火で蒸し上げることで、驚きの化学変化が起こります。
蓋を開けると、鍋肌に触れていた面はキツネ色のおこげとなってカリッと香ばしく、鍋の内側を向いた面はスープの蒸気を吸い込んでフワフワに膨らみ上がります。トウモロコシ特有の素朴な甘みと雑穀の香ばしさが、濃厚な醤油ベースの煮汁と奇跡的な調和を生み出すのです。本場直伝の鉄鍋炖の食べ方としては、この焼き立てのパンをちぎり、濃厚なスープに浸しながら骨付き肉と一緒に頬張るのが正しい流儀とされています。