起座呼吸は、ある日突然何の前触れもなく完成するわけではありません。多くの場合、数日から数週間前より「心不全のうっ血兆候」が体の各所へサインとして現れています。
最も信頼性が高く客観的な指標となるのが「短期間での体重急増」です。脂肪が数日で数キロ増えることは生物学的にあり得ません。「2〜3日で2kg以上の体重増加」が確認された場合、それは体内でおよそ2リットル以上の余剰な水分が貯留していることを意味します。すねの内側を指で10秒間強く押した際、皮膚が跳ね返らずに指の跡がくっきりと窪んだまま残る浮腫(圧痕性浮腫)があれば、危険信号はさらに確実なものとなります。
そして、起座呼吸と同時に現れた場合に最大級の警戒を要するのが「咳と痰の性状」です。
初期の肺うっ血では乾いた咳(空咳)が目立ちますが、病態が進行して毛細血管の透過性が破綻すると、肺胞の中に水分だけでなく赤血球が漏れ出します。これらが気道分泌物と混ざり合い、「ピンク色で泡立ったような痰(泡沫状痰)」として喀出されるようになります。この状態は肺水腫が急性かつ重篤な段階に突入したことを示しており、一刻の猶予も許されない致死的な危機です。