ライオンが命を削るように頻回な行為を行う決定的な理由は、ネコ科動物の交尾特徴である刺激排卵(誘起排卵)という生理的メカニズムにあります。
人間をはじめとする多くの哺乳類は、周期的に勝手に卵子が放出される「自然排卵」を行います。一方、ライオンやトラ、イエネコなどのネコ科動物は、通常の状態では排卵が起きません。交尾による物理的な強い刺激が膣や子宮頸部に加わることで神経系を通じて脳下垂体にシグナルが送られ、黄体形成ホルモン(LH)が大量分泌されて初めて排卵が誘発される仕組みを持っています。
さらに、ライオンの交尾成功率(1回の行為で受精・受胎に至る確率)は約1%前後と極めて低いことが判明しています。研究データによると、1頭のメスが無事に子ライオンを出産するまでに必要な交尾回数は、累計で約3,000回にも上ると推計されています。つまり、百獣の王たる繁殖戦略において、回数を極限まで増やすことは快楽のためではなく、排卵を確実に引き起こして受精を成功させるための必須条件なのです。