なぜここまで韓国大統領の退任後は波乱に満ちるのか。表面的には「歴代政権の不正が次々に暴かれるから」だが、その背後には韓国政治特有の構造的な仕組みがある。政治学者や憲法学者が繰り返し指摘するのが、大統領への権力集中を許す「帝王的大統領制」の弊害だ。
韓国憲法は大統領に巨大な権限を与えている。行政府の長であると同時に国家元首であり、軍統帥権を持ち、法案拒否権を行使できる。しかも任期は5年単任制で再選が禁止されている。この「再選のない単任制」が曲者で、大統領は就任した瞬間からレームダック化が始まり、任期中に権力を最大限に使って自らの影響力を温存しようとするインセンティブが働く。
さらに深刻なのが検察の政治化だ。韓国の検察は日本以上に強い権限を持ち、大統領経験者を次々と捜査のターゲットにしてきた。政権が交代するたびに、前政権の大統領やその側近が捜査対象になるという「政治的報復の連鎖」が常態化している。尹錫悦自身、検察総長として文在寅政権を追い詰め、大統領就任後は逆に文在寅氏への捜査を進めた。そして今度は自らが逮捕される立場に転落した。この循環構造こそが、韓国大統領の「末路」を残酷なものにしている本質である。
元大統領秘書官の証言や政界関係者の回顧録によれば、大統領在任中から「退任後の安全」を最優先に考える文化が政権中枢に根付いているという。ある元高官は自著で「大統領は退任後の検察捜査を恐れ、側近に『裏切るな』と繰り返し言い聞かせていた」と赤裸々に記している。退任後を見据えた権力闘争が、在任中の政策判断を歪めるという悪循環が韓国政治には存在するのだ。