一方で、2019年頃を境に「性格が変わったのではないか」という声が一部で上がったことも事実です。ロック調の楽曲『限界突破×サバイバー』で見せたアイメイクやボディスーツ、フェミニンな私服姿、さらには「Kiina」という呼称の定着など、これまでの清純派演歌歌手のパブリックイメージを鮮やかに覆す変貌を遂げたからです。
この変化を「性格が変わった」と捉えるのは早計です。実際には「周囲が求める理想のキャラクターを演じ続ける重圧から脱し、本来の自分を取り戻した」という表現が正確です。
デビュー以来、氷川きよしは「礼儀正しい演歌界の貴公子」「爽やかな好青年」という強固なペルソナを求められ、その期待に完璧に応え続けてきました。しかし、自著や特別番組のロングインタビューで告白しているように、本来の感受性やジェンダーレスな美意識、ロックやポップスへの憧れを押し殺し続ける日々は、精神的な摩耗を伴うものでした。「自分を偽ったままでは生きられない」「自分らしい表現で人を励ましたい」という強い決断が、外見や発信スタイルの劇的な変化へとつながったのです。
2022年12月31日のNHK紅白歌合戦を最後に一時休養に入り、2024年の活動再開および長年所属した事務所からの独立を経た現在、その表情にはかつてのような張り詰めた緊張感が消え、肩の力が抜けた自然体の笑顔が広がっています。内面の優しさや礼儀正しさはそのままで、自分自身の意思を堂々と発信する「精神的な自立」を果たしたことが、周囲にポジティブな変化として映っているのです。