ネット上の旅行まとめ記事やSNS動画では、「誰にも教えたくない絶景」「まるで異世界」といった甘美な言葉が踊ります。しかし、調査報道の視点から指摘しなければならないのは、そうした情報が「過酷なアクセス環境」や「地域の暗黙の了解」を意図的に切り落として消費されている点です。
代表的な誤解が、「穴場は手軽に行ける裏道である」という認識です。実際には、熊本の隠れ名所の多くが、幅員3メートル未満の離合不可区間、落石注意の山岳林道、携帯電話の基地局電波が届かないブラインドエリアに位置しています。燃料の残量管理やロードサービスの呼出困難リスクを考慮せずに進入し、タイヤの脱輪や立ち往生を引き起こすトラブルが後を絶ちません。
また、決済手段の罠も見落とせません。都市部のキャッシュレス化が浸透した現在でも、山間部の無人直売所や個人の隠れ家店舗、共同浴場の日帰り入浴では、現金決済(それも100円玉や1,000円札)のみの対応が基本です。デジタルな利便性を前提にして向かうと、思わぬ不自由を強いられることになります。