「花」や「以心電信」をはじめとするオレンジレンジの楽曲群が、リリースから20年以上の歳月を経て驚異的な再浮上を遂げている。ストリーミングサービスにおける月間リスナー数は右肩上がりを記録し、TikTokでは「#ロコローション」や「#イケナイ太陽」を冠したダンス動画やリップシンク投稿が累計数億回再生を突破した。この異例のバイラル現象の背景には、平成レトロのノスタルジー消費にとどまらない、楽曲構造そのものが持つ「即効性の高いフィジカル性」が存在する。
音楽社会学的な見地から分析すると、彼らのサウンドはHIP HOP、パンク、沖縄音階、J-POPの王道コード進行をごった煮にした「高度なミクスチャー・ポップ」である。イントロからわずか数秒でリスナーの身体を揺らすビート設計、HIROKI、YAMATO、RYOの3MCが繰り出す高音・中音・低音のトリプルボーカルの掛け合いは、可処分時間の奪い合いが激化する現代のショート尺コンテンツと極めて相性が良い。スマートフォンの画面越しに音楽と出会う世代にとって、彼らの楽曲は古臭い過去の遺物ではなく、抜群にノリが良くキャッチーな「新感覚のダンスチューン」として受容されている。
さらに、映画『いま、会いにゆきます』の主題歌としてミリオンセラーを記録したオレンジレンジ花主題歌の持つエモーショナルなバラード構成や、携帯電話の普及期に人と人との距離感を歌い上げた「以心電信」のストレートな歌詞は、デジタルコミュニケーションが飽和し孤独感を抱えがちな現代人の心に、嘘のない温もりとしてダイレクトに響いている。