田宮二郎や唐沢寿明といった歴史的名優たちが歴代の財前五郎を演じ、それぞれの時代における「男の野望」を象徴してきた。その巨大な先人たちの影が落ちる中、主演に抜擢された岡田准一が挑んだのは、圧倒的なカリスマ性と同時に、ふとした瞬間に覗く一筋の脆さを持つ人間・財前五郎の立体的な構築だった。
第一外科の執刀医としてメスを握る際の手さばきや、鋭い眼光で周囲を射抜く立ち振る舞いは、長年の身体訓練に裏打ちされたリアリティを漂わせる。しかし、本作が従来のバージョンと一線を画すのは、教授選という泥沼の政治工作の中で見せる焦燥や、心の奥底に隠された母への想いといった、生身の人間としての動揺を緻密に表現した点にある。威風堂々とした立ち振る舞いの裏に滑り込ませた「若き野心家の焦り」が、財前というキャラクターに圧倒的な説得力を与えた。