この作品が日本社会で突出した知名度を獲得した背景には、初出発表以降のメディア展開と教育現場への定着という二重のプロセスが存在します。
元々は1968年に刊行された詩集や児童向けの詩選集に収められていたものですが、広く知れ渡る大きな分水折となったのは、1980年代から始まった国語教科書(主に光村図書出版の中学1年国語)への掲載でした。全国の中学生が国語の最初の単元でこの詩を音読し、文字通り「言葉のバトン」を声に出して受け取る体験を共有してきました。
さらに、社会的な認知度を一気に高めたのが、ネスレ日本が放映した「ネスカフェ」のテレビCMです。静謐なピアノの旋律とともに、若手女優やナレーターがこの詩を語りかけ、忙しい朝を迎える視聴者に「世界とつながる一杯のコーヒー」を想起させました。教科書という公的な学びの場と、お茶の間のテレビCMという日常的な空間が見事に呼応し、国民的アンセムとも呼べる定着ぶりを見せたのです。