太宰治の生き様を語る上で欠かせないのが、彼をとり巻いた女性たちの存在だ。正妻である津島美知子、弟子であり愛人でもあった太田静子、そして最期を共にした山崎富栄。執筆当時、太宰の傍らには常に彼女たちの影があり、愛憎の葛藤が執筆の燃料となっていた。
『斜陽』の体験手記を提供した静子との関係や、妻・美知子への葛藤、そして富栄との破滅的な愛。死の直前に書かれた『人間失格』には、これら複数の女性との間で生じた苦痛や快楽、罪悪感が複雑に絡み合っている。自身を「道化」と称しながらも、死へ向かって突き進む文豪の狂気と愛憎劇の真実が、作品の行間から立ち昇ってくる。