日常会話やビジネスの激励でもよく使われることわざに、「按ずるより産むが易し(あんずるよりうむがやすし)」があります。
この言葉は、「出産前にあれこれ思い悩んで心配していても、いざ実際に産んでみれば案外と苦もなく済むものだ」という母胎の経験から来ています。転じて、「行動を起こす前に思い悩むよりも、実際に挑戦してみたほうが予想以上に物事は順調に進む」という前向きな教訓として定着しました。
ここで気になるのが、「按ずる」と「按じる」の違いです。
結論として、両者の意味は全く同一です。文法的な違いに過ぎません。
・按ずる:古典的なサ変動詞(サ行変格活用)の終止形・連体形。
・按じる:現代口語において上一段動詞へと変化(上一段化)した形。
ことわざや慣用句としては古風な響きを残す「按ずるより産むが易し」「肚(はら)を按ずる」が定着していますが、現代の日常会話や小説などの文章では「行く末を按じる(心配する、思いめぐらす)」と上一段化して使っても文法的に正しい表現とみなされます。