黒柳徹子の父・黒柳守綱(もりつな)の名は、日本のクラシック音楽史において輝かしい異彩を放っている。昭和初期、NHK交響楽団の前身である「新交響楽団」でコンサートマスターを務めた人物だ。
指揮者ヨーゼフ・ローゼンストックの下でオーケストラを牽引した彼の演奏は、鋭利で感情豊かな音色で聴衆を魅了したという。妥協を一切許さない苛烈な芸術家気質は、時に周囲との摩擦を生むほど激しいものだった。徹子が幼少期に耳にしたのは、父が自宅で奏でるストラディバリウスの響きと、音楽に対する圧倒的な情熱だった。
芸術に対して一切の嘘をつかない真摯な姿勢。それは間違いなく、現在の黒柳徹子が魅せる妥協なきトーク番組へのこだわりや、舞台『海外コメディシリーズ』で長年培ってきた演技に対する執念へと脈々と受け継がれている。