ドラッグストアの胃腸薬コーナーに駆け込む前に、まず理解しなければならない大原則があります。それは、「急性胃腸炎の市販薬で病原体そのものを退治できる特効薬は存在しない」という医学的事実です。
日本国内で突発的に発生する感染性胃腸炎の約8割以上は、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなどのウイルス感染が占めています。インフルエンザに対する抗ウイルス薬のような特効薬は現在の医療現場でもウイルス性胃腸炎には存在せず、処方薬であっても対症療法(症状を緩和しながら自己免疫で排除するのを待つ治療)が基本となります。そのため、「薬を飲めば数時間で劇的に完治する」という期待を持って市販薬を探しても、望む効果は得られません。
一般的な感染性胃腸炎の症状経過は、ウイルスが体内に侵入してから通常24〜48時間の潜伏期間を経て発症します。初期の12〜24時間は激しい嘔吐や吐き気がピークを迎え、続いて水のような下痢、微熱から38度台の発熱、腹痛が押し寄せます。大半のケースでは、適切な水分補給と安静を保てば発症から2〜3日(48〜72時間)程度でウイルスの排出が進み、自然回復へと向かうサイクルを辿ります。
一方、カンピロバクターやサルモネラ、病原性大腸菌などが原因となる「細菌性胃腸炎(食中毒)」の場合は、発熱が38度を超えたり、激しい腹痛や便に血が混じる「血便」を伴う頻度が高くなります。細菌性の場合、重症例では医療機関での抗菌薬(抗生剤)投与が必要となるため、市販薬での自己処理は極めて危険です。