ネット上の言説で頻繁に見られるのが、「山本由伸はいつでも好きな時にFAになって再契約できる」という誤解です。実際には、契約書に盛り込まれたオプトアウト条項(契約破棄条項)には、球団側を故障リスクから守るための極めてシビアな防衛条件が組み込まれています。
『AP通信』が入手した契約詳細によると、山本投手が契約を途中で破棄してフリーエージェント市場に出られるタイミングは、原則として「2029年シーズン終了後(6年目)」と「2031年シーズン終了後(8年目)」の2回です。しかし、ここには重要な特記事項(コンティンジェンシー)が存在します。
具体的には、右肘のトミー・ジョン手術を受けるか、右肘の靭帯損傷により連続134日以上負傷者リスト(IL)に入った場合、オプトアウトの権利発生時期が自動的に「2031年シーズン終了後(8年目)」と「2033年シーズン終了後(10年目)」へと後ろ倒しになります。球団にとって最も恐ろしい「高額契約直後の長期離脱」が発生した際には、復帰後の投球期間を球団が安価に拘束できるようプロテクトが掛けられているわけです。
一方で選手側にも配慮があり、もし右肘の手術履歴によってオプトアウトが後ろ倒しになった場合、2035年(契約最終年)終了時にドジャースが契約延長オプション(年俸1000万ドル)を行使しなければ、球団都合のバイアウト(違約金)が発生する仕組みになっています。一方的な不利益を避けつつ、双方のリスクをフェアに相殺する近代MLB契約の最高傑作とも言える条項設計です。