トントン、と小気味よい金槌の音が作業場から漏れてくる。日田の代名詞でもある「日田下駄」の工房だ。寒暖差の激しい山林で育った日田杉は年輪が緻密で、素足に触れたときの温度が驚くほど柔らかい。
「昔ながらの形をただ作っていても、現代人の生活からは滑り落ちてしまう」。そう語る若手職人は、スニーカー底の構造を取り入れたモダンなルームサンダルや、現代のフローリングを傷つけない革張りの下駄を次々と生み出している。伝統工芸をガラスケースから引きずり出し、日常の土足履きへと奪還する。道具としての誇りを捨てないクラフトマンシップが、この通りのあちこちで静かに火花を散らしている。