20世紀初頭に独自の教育法を確立した医師マリア・モンテッソーリは、「手は知性の道具である」という決定的な言葉を残した。人間は考えるから手を使うのではない。手を使い、物に働きかけることによって知性を自ら編み出していくのだという視点だ。
近年の幼児教育界隈において、モンテッソーリの教えが再び強い脚光を浴びている背景には、道具のバーチャル化に対する強い危機意識がある。刃が紙を裂くときの「サクッ」という微小な抵抗感、切り落とされた破片が重力に従って机に落ちる軌跡、紙の匂い。それら五感へのフィードバックすべてが、幼いシナプスを急速に繋ぎ合わせていく。既製品の玩具を与えること以上に、自分の意志で外界の形を変える体験が子どもの自律心を育てる。