テレビドラマの歴史において、「ドロドロ劇」と呼ばれるジャンルを確立した立役者のひとりが内館牧子氏であることは論を俟ちません。しかし、彼女の作品が他の愛憎劇と決定的に一線を画しているのは、視聴者が「これは自分自身の醜い本音かもしれない」と戦慄してしまうほどのリアルな心理描写にあります。
内館牧子 脚本 特徴として最も際立っているのは、綺麗事の一切を排除した台詞回しです。登場人物たちは、世間体や道徳という仮面を被りながらも、ふとした瞬間に剥き出しの劣等感や独占欲を露わにします。「愛しているから奪う」のではなく、「相手の幸せを壊してでも自分が優位に立ちたい」という根源的な承認欲求を描き切る点に、視聴者は恐怖を覚えつつも目を離せなくなるのです。
当時、ドラマの制作現場を取材したテレビ誌記者の証言によると、現場の俳優陣に対しても「もっと生々しく、他人の恥部を覗き見るようなトーンで」という細かな演出指導が徹底されていたといいます。視聴者が胸を締め付けられたのは、フィクションの過激さではなく、誰もが心の奥底に隠し持っている「毒」そのものでした。