調味の技法を科学的な見地から支えているのが、トマトのパイオニアであるカゴメ株式会社の長年の研究成果だ。トマトには遊離グルタミン酸が豊富に含まれており、これが牛肉や豚肉に含まれるイノシン酸と出合うことで、味覚の相乗効果が爆発的に起こる。旨味の強さは単体の足し算ではなく、掛け算で跳ね上がるのだ。
しかし、缶詰やピューレをそのまま加熱するだけでは、トマト特有の揮発性有機酸が舌を刺激してしまう。カゴメの研究データでも示されている通り、酸味を心地よい風味へと落ち着かせるには「油分との適切な加熱乳化」と「適度な糖・塩分バランス」が欠かせない。肉を焼いた脂を利用してじっくりとトマトのペーストを炒め、酸の尖りを飛ばす工程は、化学的に見ても極めて合理的なアプローチなのである。