ベランダに重いマットレスを運び出し、日光に当てて布団叩きで強く叩く。日本の住宅街で長年繰り返されてきたこの光景は、科学的にはほぼ無意味であり、むしろ健康リスクを高める行為だと専門家は警鐘を鳴らす。
ダニが死滅する条件は「50℃以上の熱を20〜30分間以上」もしくは「60℃以上の熱を瞬時に」加えることだ。しかし、真夏の直射日光であってもマットレス内部の温度はせいぜい35〜40℃程度までしか上がらない。熱を感じたダニは、光と熱を避けて光が届かないマットレスの最深部や裏面へと逃げ込むだけだ。
さらに深刻なのは布団叩きによるアレルゲンの破砕である。アレルギー研究の拠点である国立病院機構相模原病院などの研究でも指摘されている通り、ダニ対策で真に警戒すべきは生体そのもの以上に「死骸」と「糞(フン)」だ。強く叩くことで繊維内部の糞や死骸が細かく粉砕され、微小な粉塵となって空気中に舞い上がり、吸入リスクが跳ね上がる。天日干しは湿気を飛ばす効果こそあれど、駆除という観点では決定打になり得ない。