坂東龍汰という表現者を語る上で、その類を見ないバックボーンに触れないわけにはいきません。彼は1997年5月24日、アメリカ・ニューヨークで生まれました。
彼の父親はかつて映画監督を目指して単身アメリカへ渡り、その後現地で歯科技工士の会社を立ち上げるなど、極めて挑戦的で型破りな半生を送った人物です。坂東が3歳の時、一家は北海道伊達市へと移住。そこで父親はゼロから土地を開墾し、なんとワイン用のブドウ農園(ワイナリー)を興しました。広大な北海道の大自然の中で、泥にまみれ、自らの手で生活を切り拓く父親の背中を見て坂東は育ちました。
そしてもう一つ、彼の感性を決定づけたのがシュタイナー教育です。坂東は小・中・高校の12年間を一貫校「北海道シュタイナー学園いずみの学校」で過ごしました。この教育システムには次のような際立った特徴があります。
- 教科書を使わず、生徒自身が学んだことをノートに絵や文章で記録して自作のテキストを作る。
- 幼少期からテレビ、ゲーム、電子機器を一切遠ざけ、感覚器官の健やかな発達を最優先する。
- 演劇、絵画、オイリュトミー(運動芸術)、木工、農業など、身体と芸術を通じた学びが教育の中心にある。
- テストの点数による序列化を行わず、個々の内面的な成長や個性を評価する。
デジタル情報に侵されず、豊かな自然の中で木を削り、土に触れ、仲間と何ヶ月もかけて演劇を作り上げる日々。高校の卒業公演で主演を務めた際、舞台上で全身の鳥肌が立つような高揚感を覚えたことが、彼が役者を志す直接の契機となりました。
なお、ネット上では「ニューヨーク生まれだからネイティブ並みの英語ペラペラなのか」という疑問が散見されますが、3歳で北海道に移住したため、幼少期に英語を流暢に話していたわけではありません。しかし、学園で育まれた研ぎ澄まされた聴覚や身体感覚、そして父親譲りの物怖じしない度胸によって、後年独学や海外滞在を通じて実践的な英語コミュニケーション能力を身につけています。この「体で言語を掴み取る感覚」も、演技におけるセリフの説得力に直結しています。