大手SNSや質問投稿サイト(Yahoo!知恵袋など)を定点観測すると、「スーパーで買った白菜が黒い斑点だらけだった。店に苦情を言うべきか」「気持ち悪くて半分捨ててしまった」といった投稿が毎年冬場になると数千件単位で浮上します。
流通の最前線に立つスーパーマーケットの青果バイヤーや直売所の担当者へのヒアリング取材では、切実な現場の実態が浮かび上がってきます。
「お客様から『病気の商品を売りつけられた』と返品やクレームを受けることが頻繁にあります。売り場ではスタッフがゴマ症の出た外葉を何枚も剥ぎ取り、軸を削って陳列せざるを得ないのが現状です。結果として可食部分の約15〜20%が無駄に廃棄され、深刻なフードロスの一因になっています」(都内青果チーフバイヤー)
日本の消費市場には、「外観が均一で一点の曇りもない青果物こそが安全・高品質である」という根強い無菌幻想(視覚的バイアス)が存在します。しかし、農業現場の真実は異なります。ゴマ症の白菜は、厳冬期の厳しい霜に耐え、凍結を防ごうと自ら糖分やポリフェノールを蓄えた「むしろ甘みが凝縮している個体」であるケースも少なくありません。
外見のわずかな斑点に過剰反応して廃棄することは、家計への経済的損失であるだけでなく、持続可能な食料循環の観点からも大きな社会課題となっています。