新宿駅西口から徒歩1分、青梅街道とJR線路に挟まれたわずか2,000平方メートルほどの敷地に、約80軒の飲食店がひしめき合っています。新宿思い出横丁の歴史は、終戦直後の1946年頃に形成された闇市「新宿西口名店街」に端を発します。物資統制が厳しかった当時、比較的入手しやすかった牛や豚の臓物(ホルモン)を串焼きにして提供する屋台が並んだことが、現在の新宿思い出横丁のやきとり・もつ焼き文化のルーツとなりました。
この街を語る上で避けて通れないのが、1999年11月に発生した新宿思い出横丁の火災です。28店舗が全半焼するという壊滅的な被害を受けながらも、店主たちの強固な連帯とファンからの熱烈な後押しにより見事な復興を遂げました。防災設備の強化や共同トイレの近代化を進めつつも、長屋構造の間口や木造建築の風合いは頑なに守り抜かれました。
2026年現在、周辺の新宿駅西口地区では地上数十階規模の複合ビル建設が進んでいますが、この一角だけは昭和の原風景を留めています。剥き出しのダクト、隣の客と肩が触れ合う距離感、そして頭上を走る電車の轟音。デジタル化・無機質化が進む大都市において、生身の人間同士が交錯する昭和レトロな質感そのものが、他に代えがたい価値を生み出しています。