鯛の浦遊歩道が閉鎖される決定打となったのは、自然災害による大規模な崖の崩落と落石事故のリスク増大です。かつてこの場所では、断崖の上部から数トン規模の巨岩が遊歩道上に直撃する事象や、路盤そのものが波浪によって侵食され崩落する被害が繰り返し発生してきました。
房総半島南東部の海岸線は、地質学的に「三浦層群」や「千倉層群」と呼ばれる新第三紀の泥岩・砂岩の互層で形成されています。これらの地層は堆積年代が比較的新しく、海水や風雨、塩害に晒されることで急速に風化が進む特徴を持っています。特に2019年の房総半島台風(台風15号・19号)をはじめとする記録的豪雨と暴風雨は、斜面の保水力を奪い、断崖の亀裂を急速に押し広げました。
行政関係者の安全点検報告によると、遊歩道に面した斜面にはオーバーハング(せり出した不安定な岩塊)が複数確認されており、地震や降雨のたびに新たな剥落が起きています。これを抜本的に解消するには、数百メートルにわたる急峻な断崖全体にアンカー工や防護網を施す大規模な治山・防災工事が不可欠です。しかし、数億から十億円規模に達する莫大な工事費用と、特殊な地形ゆえの施工難度の高さが壁となり、自治体の財政判断としても遊歩道の再開工事に踏み切れない構造的な背景が存在します。