明太子や通りもん、カステラなど名立たる銘菓がひしめく博多駅において、なぜ生菓子であるチョコレートショップがこれほど強固な支持を得ているのでしょうか。その理由は、地元博多における圧倒的なブランドヒストリーと、他では真似できない独自の食感設計にあります。
1942年に初代・佐野源作氏が創業したチョコレートショップは、当時まだ日本国内でなじみが薄かった本格的なトリュフや板チョコレートを手作りで世に送り出しました。現オーナーシェフの佐野隆氏をはじめとする後継者たちが「日本人の繊細な舌に馴染むチョコレート」を追求し続けた結果、1990年代に誕生したのが看板商品である「博多の石畳」です。博多の街の歴史ある石畳の小路をモチーフに作られたこのケーキは、まさにブランドの象徴となりました。
実際に口に運ぶと、チョコレートのスポンジ、生クリーム、バニラスポンジ、チョコムースが5層に緻密に重ね合わされ、極薄のチョコレートガナッシュとほろ苦いココアパウダーで丁寧に包み込まれていることが分かります。ひとすくい口に含むと、冷たいムースと生クリームが一瞬で体温に溶け、濃厚なカカオの香りを残しながらも、驚くほど軽やかに消えていきます。取材陣がパティシエ関係者に話を聞いた際にも「スポンジの水分量とムースの融点をミリ単位で調整しているからこそ、濃厚なのに胃にもたれない」と語られており、計算し尽くされた技術の結晶であることがうかがえます。