呼称変更から四半世紀以上が経過した現在、家庭や教育現場では具体的にどのようなコミュニケーションが交わされているのでしょうか。SNSやネット掲示板、Q&Aサイトに集まる親世代の生の声を集約すると、世代間による明確な認識のギャップが浮かび上がってきます。
最も典型的なのは、親が子どもに「肌色のクレヨン取って」と声をかけた際、子どもがキョトンとした顔をして「肌色ってどの色のこと? うすだいだいのこと?」と聞き返す場面です。昭和から平成初期に義務教育を受けた30代から50代の大人にとっては「肌色」が骨の髄まで染み付いた名称であるのに対し、2000年代以降に生まれた世代にとっては「うすだいだい」や「ペールオレンジ」が生まれながらの標準語となっています。子ども側には「肌の色=薄橙色」という固定観念がそもそも存在せず、色彩を客観的なトーンとして捉える感覚が自然に育まれていることが分かります。
保育現場や小学校の図工専修教員の証言によれば、現代の指導現場では「お友達の顔を描くときは、好きな色を何色も重ねて塗ってみよう」といった声かけが日常化しています。肌の色を1本のクレヨンで塗りつぶすのではなく、白や黄色、茶色、薄橙色を混色しながら自分の肌や友達の肌を観察して描く指導が浸透しており、文具の改名は教育的にもポジティブな観察力を養う土壌を生み出しています。