本作の圧倒的な説得力を支えているのが、日本映画界を代表する名優陣のアンサンブルです。
主人公の博士を演じた寺尾聰は、数学への純粋無垢な情熱と、記憶を失い続ける老人の哀愁を見事に演じ分けました。本作の演技により第30回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。撮影現場では、実際に数学の専門家からオイラーの公式や完全数についての講義を受け、指先や視線の細かな動き一つひとつに学者としての説得力を宿らせました。
家政婦の杏子役を務めた深津絵里は、過酷な境遇にありながらも明るく芯の強い女性を好演。博士が語る数式の世界に素直に感動し、目を輝かせる表情の変化は観る者を引き込みます。また、現代パートでストーリーテラーを務めた吉岡秀隆は、穏やかでありながらどこか博士の面影を感じさせる佇まいで、作品全体のトーンを温かく統括しました。子役時代のルートを演じた齋藤隆成の無邪気な演技との見事なシンクロも、本作の完成度を一段上の次元へ引き上げています。