メガネのレンズが汚れた際、最もやってしまいがちな行動が「乾いた布や紙類での乾拭き」です。特にメガネにティッシュがNGな理由は、紙の原料であるパルプ繊維の構造にあります。ティッシュペーパーは一見柔らかく肌触りが良いものの、顕微鏡レベルで見ると硬い木材繊維が絡み合って作られており、プラスチックレンズの繊細なコーティング膜に対しては硬質な研磨材として作用してしまいます。
さらに危険なのは、日常の中でレンズ表面に付着している目に見えない微小な砂埃や大気中の粉塵(石英などの鉱物粒子)の存在です。砂埃が付着したままティッシュや服の裾(化学繊維や目の粗い綿)で力を込めて擦ると、レンズ表面で砂粒を押し引きしながら引きずる状態になり、無数の微細な線傷(ヘアラインスクラッチ)が刻まれます。
大手眼鏡レンズメーカーの技術資料によると、プラスチックレンズ表面のハードコート層は日常の摩擦に対して一定の耐性を持つものの、鉱物粒子を巻き込んだ乾拭き摩擦には耐えられません。一度ついた擦り傷は光学的な屈折を乱し、光の乱反射による眼精疲労やコントラスト低下を招くため、いかなる場合も「乾拭きからのスタート」は避けるべきです。