SNSや知恵袋、消費生活センターに寄せられる相談内容を検証すると、巧妙な誘導によって望まない選択をさせられた人々のリアルな痛恨の声が散見されます。特に高額セミナーや投資商材、定期購入のWebサービスにおいては、心理的トリガーを何重にも組み合わせた手口が横行しています。
「無料相談のつもりで行ったのに、カウンセラーが私の悩みをズバズバと言い当ててきて鳥肌が立った。この人しか信じられないと思い込み、その場で60万円の継続コンサル契約書にサインしてしまった」(20代女性の手記より)
この告白の背後には、徹底したコールドリーディングの悪用があります。「誰でも抱えている人間関係の悩み」を、あたかも自分だけの特別な秘密として見透かされたように錯覚させ、急激な心理的依存状態(ラポール)を作り上げたのです。さらに、その直後に「今日決断しないと、あなたの人生はずっとこのままですが、それで後悔しませんか?」と損失回避の恐怖を植え付け、思考能力を奪っています。
また、司法の取り調べやハラスメント調査の場でも問題視されるのが誘導尋問の特徴です。心理学者エリザベス・ロフタスのクラシックな実験では、自動車事故の映像を見せた後、「車が衝突(smashed)した時、時速何キロ出ていましたか?」と尋ねられたグループは、「接触(hit)した時」と尋ねられたグループよりも有意に高い速度を回答し、存在しなかったはずの「割れたガラス」を見たと証言する割合が急増しました。質問文の中に「激しい衝突であった」という前提を暗黙のうちに滑り込ませることで、相手の客観的な記憶そのものを書き換えてしまう破壊力を持ちます。