足裏の皮膚、特にかかとは体重を支えるために角質層が約1ミリ以上と全身で最も厚く、皮脂腺が存在しないため構造的に水分が失われやすい部位です。そのため、冬の乾燥によって皮膚が硬くなる生理現象自体は珍しくありません。しかし、保湿ケアを2週間以上徹底しても改善の兆候が見られない場合、それは皮膚糸状菌(白癬菌)が角質層の深部で繁殖している「角化型水虫」を強く疑う必要があります。
両者の鑑別において最も重要な指標は、「季節変動の有無」「皮むけのパターン」「左右差」の3点です。乾燥肌であれば湿度の高い春から夏にかけて自然軽快しますが、白癬菌による感染症である場合、夏場であっても角質は硬いままか、むしろ菌の活動が活発化して皮むけの範囲が広がります。また、土踏まずや足の縁に向かって細かく薄皮がめくれ、足の皮膚の溝(皮溝)に沿って白い網目状の亀裂が走る現象は、典型的な水虫の兆候です。
かかと水虫がかゆくない理由は、白癬菌が生息している深さにあります。趾間型(指の間)や小水疱型水虫では、菌が表皮の生きた細胞に近い領域に達し、生体の免疫反応が激しい炎症を引き起こすことでヒスタミンが放出され、かゆみが生じます。一方で角化型水虫は、神経終末が存在しない死んだ角質層の分厚い壁の中で菌が静かに増殖するため、生体防御反応としての炎症が起きにくく、自覚症状が完全に欠落してしまうのです。