かつて都内を中心に約15店舗を展開していた「牛丼太郎」は、大手チェーンが繰り広げる価格戦争や、狂牛病(BSE)問題に伴う牛肉高騰などの煽りを受け、次第に経営が悪化していきました。そして2013年8月、運営会社であった株式会社深澤水産が東京地裁から破産手続き開始決定を受け、事実上の倒産となりました。
次々と看板を下ろしていく系列店の中で、唯一異なる道を歩んだのが茗荷谷店でした。「長年通ってくれるお客さんの居場所と、自分たちの働く場を守りたい」と立ち上がったのは、他ならぬ現場の元従業員たちでした。彼らは退職金や私財を工面して店舗の権利と厨房機器を買い取り、自らの手で店舗を再オープンさせるという異例の事業承継を果たしたのです。
大手飲食チェーンの撤退戦において、現場スタッフの熱意だけで個人店として復活を遂げた事例は全国的にも極めて珍しく、飲食業界の歴史に残る奇跡のサバイバル劇として語り継がれています。