ネット上の掲示板やSNSでは、大会直後から「最終決戦は和牛の構成力と演技力が勝っていたのではないか」「好みの問題で票が分かれただけ」という議論が巻き起こることがありました。しかし、これらは漫才の構造的ダイナミズムを見落とした誤解と言わざるを得ません。
和牛が展開した緻密な「屁理屈コント漫才」は、伏線回収と心理描写の巧みさにおいて傑出していました。しかし、M-1グランプリという大会の審査基準において、4分間という極限の制限時間内に「爆笑の総量」と「センターマイクに対する誠実さ」を最大化させたのは銀シャリでした。
後年の特番やインタビューで語られたところによると、鰻は本番中、審査員の視線の動きを冷静に観察しながら、あえてボケの間をミリ単位で微調整していたと明かしています。ネット上で言われがちな「鰻の天然ボケ頼み」という見方は皮肉な誤認であり、実際には計算し尽くされた間合いの駆け引きが行われていたのです。現在配信プラットフォーム等で視聴できる銀シャリM1ネタ動画をコマ送りで検証すると、橋本のツッコミが入る直前の鰻の視線や身体操作の精緻さに驚かされます。