多くの人が抱く「特務機関NERVはなぜこの名前なのか?」という疑問の答えは、開発者である石森大貴(いしもり だいき)氏の個人的な情熱と、未曾有の大災害における原体験にあります。
石森氏は学生時代から卓越したハッキング技術やプログラミング能力を持つセキュリティエンジニアであり、同時に『新世紀エヴァンゲリオン』の大ファンでした。2010年2月、劇中で使徒の襲来をいち早く察知し人類を守る防衛組織「特務機関NERV」に憧れ、Twitter(現X)上で特務機関NERV Twitter Xアカウント(@UN_NERV)を開設したのがすべての始まりです。当初は個人のプログラミング技術を活かし、気象庁のXMLデータを自動取得して地震情報などを自動投稿する実験的なボットアカウントでした。
その活動が「命を救う使命」へと劇的に変わった転換点が、2011年3月11日の東日本大震災です。石森氏の故郷である宮城県石巻市は壊滅的な津波被害を受け、実家も被災。家族の安否確認すら困難を極める混乱の中、東京にいた石森氏は「エンジニアとして自分にできることは何か」を問い続けました。テレビや大手ポータルサイトのサーバーがアクセス集中でダウンする中、石森氏は自ら立ち上げたNERVアカウントから、手動で停電情報、給水所の設置場所、津波警報の続報を昼夜問わず発信し続けました。
「正確な情報が届かないことで命を落とす人を一人でも減らしたい」という強い祈りにも似た執念が、単なるアニメのファンアカウントを、公共性の高いインフラへと変貌させる決定的な契機となったのです。その後、石森氏はサイバーセキュリティと情報配信を本業とするゲヒルン株式会社を本格稼働させ、ゲヒルン株式会社 防災情報配信プラットフォームの構築へと突き進むことになります。