物語の核心となるのは、吉野家と新名家という対照的な2組の夫婦が直面したセックスレスの末の決断です。愛はあるのに身体の触れ合いを拒絶され続けた吉野みち、妻の多忙と無関心に孤独を深めていた新名誠。同僚としての秘密の共有から始まった二人の関係は、それぞれの配偶者との向き合い方に決定的な変革をもたらしました。
吉野みちと陽一の結末において、二人は婚姻届を出し直すような安易な復縁ではなく、まず「離婚」を選択します。みちが陽一の三島との浮気を知ったこと、そして陽一が「みちを失う恐怖」と向き合いながらも本質的なレスの原因を解決できていなかったことが決定打となりました。二人は互いに深く感謝し、愛し合っていたからこそ、お互いを縛り付ける「夫婦」という檻を解体する道を選びます。
一方、新名誠と楓の離婚の真相は、キャリアに邁進する楓の自己実現と、誠が抱え込んでいた「良き夫」という自己犠牲の限界でした。ファッション誌の副編集長として激務に追われる楓は、誠の献身を当たり前の日常として甘受していました。しかし、誠から離婚を突きつけられたことで初めて自身の甘えと誠への甘えの構造を痛感。泥沼の協議を経ながらも、最後は互いに自立した大人として敬意を払い、正式に離婚届を提出しました。
注目を集めた吉野みちと新名誠の関係の行方ですが、二人が結ばれることはありませんでした。新名は離婚成立後、すべてをリセットして改めてみちに「一緒に生きていきたい」と告白します。しかし、みちは「新名さんに寄りかかることで陽一から逃げたくない」「自分の足で立って生きていきたい」とその想いを断ります。お互いの傷を舐め合うだけの不倫関係から脱却し、個としての尊厳を守る道を選んだのです。