猫の呼吸でお腹が動くのは危険?獣医師が明かす異常サインと緊急受診基準

猫の呼吸でお腹が動くのは危険?獣医師が明かす異常サインと緊急受診基準

猫の呼吸でお腹が動くのは危険?獣医師が明かす異常サインと緊急受診基準について詳しく解説いたします。専門家の見解をお届けします。

猫のお腹が激しく動く異常呼吸の背景には、生命維持に直結する重篤な基礎疾患が潜んでいるケースが圧倒的です。臨床上、特に遭遇頻度が高く致死率の高い代表的な3大疾患の病態機序を解説します。

1. 猫の肥大型心筋症(HCM)と肺水腫

成猫の心疾患の約8割を占めるとされるのが猫肥大型心筋症です。心臓の左心室の筋肉が内側に向かって異常に分厚くなり、血液を全身へ送り出す内腔が極端に狭まる疾患です。初期は無症状で経過しますが、進行すると心臓内の血流が滞り、肺毛細血管から水分が漏れ出して肺胞を満たす「肺水腫」を引き起こします。肺が水浸しになるため極度の呼吸困難に陥り、必死にお腹をペコペコと動かして空気を吸い込もうとします。血栓塞栓症を併発して後ろ足が麻痺し、激痛で鳴き叫ぶ事態に発展することも珍しくありません。

2. 胸水貯留(猫伝染性腹膜炎・膿胸・腫瘍)

肺と胸壁の間にある空間(胸膜腔)に異常な液体が溜まる状態を猫胸水症状と呼びます。胸の中に水が溜まることで肺が物理的に押し潰され、いくら息を吸おうとしても肺が膨らまなくなります。原因は心不全のほか、若齢猫に多い猫伝染性腹膜炎(FIP)、細菌感染による膿胸、あるいはリンパ腫などの悪性腫瘍と多岐にわたります。胸が拡張できないため、猫はお腹の筋肉を過剰に使って呼吸を維持しようとします。このとき、前足を突っ張り、首をまっすぐ伸ばして顎を突き出す特徴的な姿勢(起座呼吸)を見せることがあります。

3. 猫喘息(アレルギー性気管支炎)

アレルゲンやハウスダスト、タバコの煙などが原因で気道が慢性的な炎症を起こし、気管支が狭窄する病態です。急激な発作が起きると、気道が狭まり息を吐き出すことが極めて困難になります。そのため、息を押し出すために下腹部に強い力を込める呼気性努力呼吸が現れます。首を低く下げて背中を丸め、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音を立てながら激しく咳き込む様子は、毛玉を吐く動作と酷似しているため、飼い主が見過ごしやすい危険な落とし穴となっています。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。