本作の主人公であるキャラクターのルーツを辿るには、当時の掲示板カルチャーに息づいていた特有のブラックユーモアを紐解く必要があります。八頭身モナーの元ネタは、2ちゃんねるのマスコット的存在であった2頭身の猫型AA「モナー」に対し、「もしもモナーが異様な長身のリアル体型だったら」という悪ふざけから派生した派生アスキーアートでした。
元来のモナーが愛嬌のある丸っこいフォルムで親しまれていたのに対し、八頭身モナーは筋骨隆々の肉体と無機質な猫顔を併せ持ち、「逝ってよし」という過激なネットスラングを吐くグロテスクかつシュールな異端児として投稿板を徘徊していました。多くのクリエイターがこのキャラクターをギャグやホラーの記号として消費する中、ポエ山氏はその「異形性」の裏に潜む決定的な孤立に着目したのです。
作品内で描かれる世界は、無邪気に戯れる2頭身の仲間たちと、周囲から完全に浮き彫りにされた八頭身モナーの冷酷な対比です。愛らしいモナーたちが形成する無害な共同体の中に、自分のような長身で筋肉質な怪物は決して溶け込めない。自己の肉体に対する違和感(身体違和)と、他者からの無意識の拒絶。ネットの落書きから生まれたキャラクターに実存的な苦悩を付与したこの大胆なアプローチこそが、視聴者の心を強く揺さぶった要因でした。