作中で最も読者・視聴者を惹きつけるのが、ペンギンとシャチの関係です。自然界の摂理に従えば「食べる側」と「食べられる側」という絶対的な敵対関係にあります。しかし『テイコウペンギン』では、その食物連鎖の力関係が心地よく逆転しています。
ペンギンはシャチの腕力や暴走に時に冷や汗を流しながらも、持ち前の沈着冷静さと的確な指示でシャチを手なずけ、信頼できる相棒として接しています。一方でシャチは、自分よりもはるかに小柄で無力なペンギンの「理不尽に屈しない芯の強さ」に敬意を払い、忠誠を尽くします。
この関係は、現代社会における健全な「心理的バウンダリー(境界線)」の好例とも解釈できます。属性や本来の格差にとらわれず、相手の尊厳と実力への敬意で結びつく2匹の絆は、パンダとの怠惰な腐れ縁とはまた異なる、頼もしいバディシップとして機能しています。