少し専門的な地質学の視点から、この不思議な地形を深掘りしてみましょう。鬼の洗濯板の正式な地名・地質用語は「波状岩(はじょうがん)」、あるいは国の指定名称として「青島の隆起海蝕痕と奇形波蝕痕」と呼ばれ、大正23年(1934年)に国の天然記念物に指定されました。
この規則正しい地形を生み出した主役は、学術用語で「差別侵食(さべつしんしょく)」と呼ばれる現象です。岩石の硬さやもろさの違いによって、風や波に削られるスピードに差が出ることを指します。
青島周辺の地層は「宮崎層群青島相」と呼ばれる新第三紀中新世末から鮮新世(約700万〜400万年前)の堆積岩です。深海に土砂が一気に流れ込む「混濁流(タービダイト)」によって、砂の層(砂岩)と泥の層(泥岩)が極めて整然と互い違いに積み重なりました。その厚みは層ごとに数十センチから1メートル程度と極めて均一だったため、波で洗われた際に美しい幾何学模様として現れました。
この表から分かる通り、砂岩と泥岩の「硬さの落差」こそが景観の鍵です。泥岩層は海水に浸かると軟化しやすく、荒波の破砕力によって急速に掘り下げられます。一方で砂岩層は頑丈なフレームのように残るため、洗濯板のギザギザが見事に維持されています。