法務省が公開している過去の人権作文の入賞作品や例文を分析すると、高評価を得る文章には明確な共通項が存在します。それは「完璧な善人として自分を描いていない」という点です。
落選しやすい作文の多くは、「ニュースで差別を見て許せないと思った。これからは差別をなくしたい」という直線的な構成を取っています。しかし、人間誰しも心の中に偏見や弱さを抱えているものです。入賞作の多くは、次のような人間臭い内面の揺らぎを包み隠さず吐露しています。
「街で困っている車いすの人を見かけたが、声をかけるのが恥ずかしくて通り過ぎてしまった」「クラスでからかわれている友達を見て、助けたら自分も標的になるのではないかと怖くて笑って誤魔化した」。こうした「保身」「恥ずかしさ」「無意識の偏見」といった自分自身の未熟さを赤裸々に認めた上で、そこからどう考えを改めたかを綴った文章こそが、審査員の心を強く揺さぶります。
コンテストの講評でも、「事実に対する率直な驚きや痛み、自己への問いかけが生き生きと表現されている作品」が高く評価されると明記されています。必要なのは立派な主張ではなく、自分と向き合う勇気です。