健康被害を考える上で、最も直視しなければならないのが「アイコスニコチン量」と血中濃度の上昇スピードです。紙巻きタバコからアイコスへ乗り換えた喫煙者の多くが「吸いごたえが変わらない」と証言するように、専用スティック(テリアやセンティア)に含まれるニコチン量は、一般的な紙巻きタバコとほぼ同等レベルに達しています。
実際に喫煙後の血中ニコチン濃度を追跡した臨床データでは、アイコスを1本吸引した直後の血中ニコチン濃度の上昇曲線は、紙巻きタバコを喫煙した際とほぼ一致します。ニコチンは強力な血管収縮作用と交感神経刺激作用を持つ神経伝達物質です。毛細血管を急速に収縮させ、血圧を急上昇させるとともに、心拍数を跳ね上げます。このため、動脈硬化の進行や心筋梗塞、脳卒中といった循環器系疾患のリスクに関して言えば、アイコスであっても紙巻きタバコと大差ない健康リスクを抱え込み続けているのが冷厳な現実です。
アイコス体に悪い理由として呼吸器内科医が強く警鐘を鳴らすもうひとつの要素が、エアロゾルに含まれるプロピレングリコールや植物性グリセリンといった添加物の肺深部吸入です。これらの化学物質は食品や化粧品への配合が認められている安全な成分ですが、それはあくまで「経口摂取」を前提とした評価です。加熱気化させて肺胞の奥深くに長期間送り込み続けた場合の生体毒性について、10年〜20年スパンでの疫学データは世界中どこにも蓄積されていません。科学的な観点から言えば、現在進行形で人類規模の観察研究が行われている状態といえます。