なぜ、器質的な異常がないにもかかわらず、これほど強い症状が現れるのか。その鍵を握るのが、消化管と中枢神経が密接にシグナルを交わし合うメカニズム、すなわち脳腸相関だ。
日本の消化器疾患研究を牽引する第一人者である三輪洋人医師らの研究をはじめ、近年の医学的知見は胃と脳の双方向性の連絡ルートを解明しつつある。ストレスや不安が脳に伝わると、神経伝達物質を介して即座に胃の運動が停滞したり、痛みの閾値が下がって過敏状態に陥ったりする。逆に、胃の微細な不快感が脳へ不穏なシグナルを送り続け、精神的な焦燥感を増幅させるという悪循環が形成されるのだ。